子ども達の中の温かい気持ち
(いのうえせんせい


 子ども達から「先生!」と呼ばれるようになって、今年で3年目になります。まだまだ未熟な私を成長させてくれるのは他ならぬ、子ども達です。1年目、2年目と年中組を担任させていただきました。今年は初めての年少組です。先生も初めて、子ども達も初めて、お互いがドキドキと緊張した4月のスタートでした。
 
 4月当初、初めて親元を離れる子ども達にとって、幼稚園での生活は期待と不安が入り混じったものだったと思います。慣れない環境やさみしさで泣いて登園する子もたくさんいました。玄関から泣いて、お母さんから引きずられながら入ってきたSくん、バスに乗るときはバイバイできたけど、やっぱりさみしくなってきたHちゃん、お家の人と別れるのはつらいけど、頑張って手を振るRくん、一人ひとりが様々な思いを抱えながらの登園でした。2学期も後半になり、泣いていた子ども達もこれまでさまざまな出来事や思いを経験してきたことで、今では玄関から颯爽と現われ、「みお先生―!おっはよー」とニコニコ笑顔で登園してくるようになりました。そんな姿からも成長したなぁとしみじみ感じ、とてもうれしくなります。今まで以上に友達を意識し、大好きな友達と一緒に遊ぶことを楽しんだり、なかなか思いが通じ合わずに、トラブルになったりする姿も多く見られるようになりました。トラブルの際はお互いの心の中を、ぐるぐると絡まった糸をほどいていくように一緒に整理しながら、自分の思いを伝えたり、相手の思いに気づいたりすることが出来るように、丁寧に関わっています。楽しいこと面白いこと、嫌だったこと、怒ったこと、子ども達の一喜一憂が無駄ではなく、子ども達が成長していく上で大切なことなのだと改めて思うところです。
 
 最近、私は専門学生時代のことをよく思い出します。幼稚園の先生になりたいと日々頑張っていたあの頃、私は、あるおこがましい考えを持っていました。それは“子ども達に思いやりや優しさを、先生である私が伝えなくちゃいけない”とう考えです。もちろん、そういう場面もあるかもしれません。でも実際に、先生の立場になったときに、必ずしもその考えだけではないということに気がつきました。それを教えてくれたのはやはり、子ども達でした。

 6月頃、園庭で遊んでいたときのこと、MちゃんはKK牧場を見に行きたいと思い行こうとしました。KK牧場の前は斜面になっており、手前には少し岩もあります。Mちゃんは自分一人で行こうとしましたが、途中で自分がみんなよりも少し高いところにいることに気づき、怖くなり、泣き出して助けを求めました。私たちが行こうとすると、Mちゃんの近くにいたYくんとRくんがすかさず、Mちゃんの元へ行き、Yくんが手を、Rくんが腰を持って、Mちゃんを支えてあげ、一緒にKK牧場に行き、また一緒に降りてきました。Mちゃんも二人が来てくれたことで安心し、うれしそうに戻ってきました。もちろん、先生が「誰か助けてあげて」とお願いしたわけではありません。二人は友達が泣いていることに気づき、助けてあげたいという一心でこの行動に出たのだと思います。幼稚園生活をまだ2.3ヶ月しか送っていない子ども達が、この行動をしたときは正直驚きました。そして、この姿を見て、子ども達はもともと、優しさや思いやりの心をきちんと持っているのだと思いました。産まれてから、お父さんお母さん、お祖父ちゃんお祖母ちゃん、たくさんの人から、愛され、愛情をいっぱいもらってきた子ども達は、この温かく、優しい気持ちをきちんと覚えているのではないかと思います。小さいながらに家庭で優しくしてもらったうれしい気持ち、いっぱい遊んでもらった楽しい気持ち、その温かい気持ちが一つになって、子ども達の心の中にいきているのだと思います。温かい気持ちがあれば、悲しい気持ちにも気づくことが出来るし、もっと楽しいことをいっぱいしたいという意欲にもつながると思います。しかし、子ども達は百人いれば百通りの子ども達がいます。すべてが同じの子どもはいません。その温かい思いを存分に出している子もいれば、気持ちが恥ずかしがって出てこなかったり、もしかしたら、心の中でずっと眠ったままでいたりする子もいるかもしれません。そのような子ども達の思いを存分に出してあげることが、私たちの出来ることなのではないかと思います。子ども達の心の中で恥ずかしがっている思いや、眠っている思いが出てくることが出来るよう、幼稚園でもうれしいことや楽しいことをたくさん経験できる環境を作り、子ども達と一緒に過ごしていきたいと思います。

 まだまだ未熟な私です。子ども達と一緒にうれしいこと楽しいこと、悲しいことこわいこと、さまざまなことを経験しながら、子ども達に負けないぐらい大きくなっていけたらと思っています。