母親の存在
(まるやませんせい

 三歳児は無邪気で天真爛漫。時々いたずらやいじわるもし、天使と悪魔が同居しているように思うこともありますが、本当にかわいい存在です。
 産休明けの六月から初めて三歳児のクラスを担任し一緒に過ごす中で、母親の存在がいかに大きく、またとても大切なものであるかということを改めて感じることができた素敵な体験をここで紹介したいと思います。

★「風の味」
 ある風の強い日、本堂前のブランコで遊んでいた時のことです。いつもブランコにゆられながら風を感じていたYちゃんはその日の風の強さに気づいたのです。「今日は、風が強いね。風は見えないけど味はするよ。」と大きな口を開けて風を食べています。一緒に遊んでいた子ども達も「僕も食べてみる。」「私も。」とすぐに口いっぱい風をほおばり始めました。「先生、私の風は、いい味がするよ。」とYちゃん。「うわあー、どんな味がするの?」と聞くと、「あのね…おっぱいの味〜」とにっこり。すると次々に「私のもおっぱいの味がするよ。」「僕のもする。」と子ども達。「おっぱいってどんな味がするのかな?」再び聞いてみると「あのねぇ、あのねぇ、優しい味。お母さんの味だよ。」とにこにこしながら答えてくれました。「本当だ。先生にも優しい味がする。おっぱいの味だ。」といつの間にか、私も大きな口を開けておりました。
 風に味がついていたなんて、普通の生活の中ではなかなか気づきませんよね。それをしっかりと体で感じ取り、三歳児独特のユーモアたっぷりの表現方法で私たちにも教えてくれたのです。みんなで「風の味」を満喫し幸せな気分を味わうことができました。

「私がお母さんね!」
 子どもはごっこ遊びが大好き。特にままごとをしての家族ごっこは毎日、あちらこちらで行なわれています。家庭での生活経験を再現しながら友達と一緒に楽しむ姿が見られます。
 私も一緒に遊びたくて「入れて」と言うと、「先生はバブちゃんね。」(バブちゃんとは赤ちゃんのことです。)とお母さん役のKちゃん。「私は、お姉ちゃん」「僕はお父さん」などと自分の役を紹介してくれる子ども達。いろいろな役になることができるのも人気の秘密かもしれません。「さあ、今日はバブちゃんのお誕生日だからケーキを作るわね。」「うわーい、うれしいバブ。早くたべたいバブバブ。」「はいはい。ちょっと待っててね。すぐ出来るからね。」「バブ、バブ。」「よしよし。もう少しよ待っててね。」と私の頭をなでたり言葉をかけてくれながらフライバン片手にお母さんの優しさも忘れていません。「今日はお父さんも早く帰ってくるって!」「あら、お姉ちゃん達おそいわね。まだ学校から帰ってこないわ。」その言葉を聞いて「ただいま。勉強しなくちゃ。」このタイミングがまた合っているのです。
 一緒に遊んでいるとお家の様子がわかり思わず吹き出しそうになることもあるのですが我慢、我慢。バブちゃんになりきります。勿論、教師の役割とは何か、ということも忘れられません。子ども同士の意見の違いでけんかになることも多々あります。そんな場面では、「一緒に」「仲良く」と思いがちですがそのことだけにとらわれることなく、一人ひとりの世界を自分なりに広げていけるよう、また友達との出会いを大切にしながら双方の思いを伝えたり、橋渡ししたりして援助しています。

 子どもにとって母親とは、やはり一番安心できる存在であり心の支えであると思います。幼稚園において母親的存在になることができる保育者。その保育者との信頼関係が園生活をしていく上で最も重要です。心の支えがあってはじめて、「自分でやりたい」「遊びたい」という気持ちになるのではないでしょうか。
 今後とも母親が接しているように、スキンシップを大切にし温かく見守りながら(時には厳しくも必要でしよう。)子どもの気持ちに添っていく保育を心がけていきたいと思います。